第5回醤油名匠

桜のチップで濃口醤油を燻して作る燻製醤油が“第2の醤油”として高い評価を受け大賞に選ばれた。燻製醤油は桜のチップで15分程燻すが、季節や食材によって桧、杉等を使う。スモークされた醤油からほのかに桜の香りが漂う。この燻製醤油には魚の生臭さを取る消臭効果もあり、燻製醤油と出汁、酒、アサリの煮汁をかけて作るカレイの煮物や炙った切り身を燻製醤油に浸してつくる「鰹のたたき」は幅広い世代に人気。

鹿児島の食材に合うのは、コクと甘みの強い地元の醤油。みりんに濃口醤油と酒を加え、焦がさないように注意を払いながら煮きる。これを素材や料理に合わせ調味しながら使い分けている。焼酎の肴にぴったりな「アジと田舎豆腐の焼酎風味漬」には、魚の生臭さを消しながらもうま味は残す特製の煮きり醤油を使用。醤油に芋焼酎を加えてしっかり香りづけをした地元産の木綿豆腐も美味。

数あるメニューの中でも人気が高いのが濃いめの鰹出汁で季節の野菜を煮込んでいく醤油ベースの野菜スープ。焼いた炭を直接淡口醤油に入れ、香り醤油を作る。旬の野菜が煮立ったところにオリーブオイルと香り醤油を注ぎ出来上がり。出来上がった付け醤油をこし、クズを溶かしこんで粘度のある濃厚なタレで模様を描き盛りつける「刺身の盛り合わせ」は特に女性客に喜ばれている。

2004年にそばの激戦区東京・神田須田町に蕎麦屋を開店。すっきりとフレッシュな味のそばつゆは、醤油の大敵「酸化」を防ぐ独自の製法を開発。再仕込醤油とみりん、煮きった酒を瓶に入れ、高温の鰹出汁を容器一杯にまで加えて密栓する。それによって、瓶の中は無酸素状態にして酸化を防ぐという独自製法が評価された。また、蕎麦屋で酒を飲む江戸っ子の風習を守り、独自の酒の肴も考案。